NPO法人 成年後見相談センター・ラパス
2000年4月、介護保険制度と同時に、新しい成年後見制度が施行されました。制度施行後5年経過しましたが、介護保険制度に比べ、成年後見制度は、一般の方にはまだまだほとんど知られていません。しかしながら、ご承知のようにこれからますます高齢化は進行します。例えば、団塊世代の昭和21年生まれの人は今年で60歳。その親の世代は70代から80代となっています。「痴呆になったらどうしよう」「身体が不自由になったらどうしよう」という心配が、まさに現実問題になってきているわけです。
成年後見制度とは、知的障害の方、あるいは私たち自身や親の世代が高齢のために判断力が不十分になった時に、法律面や生活面で保護したり支援してくれる制度です。
もともと、制度自体は100年以上前の明治31年に、禁治産、準禁治産として施行されました。これが、新しい制度では、それぞれ後見、保佐と変わり、新たに補助の制度が加わりました。この「後見」、「保佐」、「補助」の制度までを法定後見制度といいます。
更に新しい制度では目玉として、『元気なうちに自分で後見人を決めておく任意後見制度』が加わりました。
新しい成年後見制度の主なポイントは以下のとおりです。
これまで、後見人の仕事は財産管理が主でしたが、新しい制度では、本人の身上や身の回りのことにも配慮しなければならないことが明確に定められました。
従来の制度は、本人保護より第三者との取引関係の安定を重視することに偏ってしまい、本人の法律行為や権利を画一的に奪ってしまっていました。
例えば禁治産宣告を受けると、選挙権も無くなり、日用品の購入のような行為もできません。又、一般職の公務員から社労士、税理士、医師、薬剤師、弁護士など150種類以上の資格が剥奪されてしまい、全人格を否定されるような状態になっていました。新しい制度では、できるだけ本人の判断能力に応じて、自己に関わる事柄はできるだけ自分で決定することとなりました。
具体的には、日常生活に必要な範囲の法律行為に関しては、本人の判断に委ねることになりました。また、より自己決定権を尊重した補助の制度を新設、元気なうちに自分で後見人を決めておく「任意後見制度」を新設しました。
従来の制度では、禁治産、準禁治産は、すべて戸籍に記載されました。そのため、家族の結婚や就職のことを考えると、利用には非常に抵抗を感じる人も多く、在宅の6歳以上の要介護者数124万人以上に対して、制度の利用者は年間4000件程度と、ほとんど利用されていませんでした。
新しい成年後見登記制度は、後見人の権限や後見契約の内容などが登記され、必要に応じて、登記官が登記事項証明書を発行することによって登記情報を開示する制度となりました。この制度ができたことによって、例えば銀行と交渉しなければならなくなった場合でも、登記事項証明書によって、預金の払い戻しや定期預金の解約なども、スムーズに進めることができるようになりました。
以前の制度の場合、後見人、保佐人は1人に限られていたため、必ずしも適任者による保護や支援を受けられず、本人の保護体制が十分とはいえませんでした。
また、夫婦の場合は、もう片方の配偶者が必ず後見人・佐人とならなければなりませんでしたが、高齢の夫婦の場合、配偶者も高齢ですから、実際には後見事務を行えないことが少なくありませんでした。新しい制度では、これを改善するため、後見人、保佐人は、複数、あるいは法人でも可能になりました。
市町村長に法定後見(後見・保佐・補助)の開始の審判の申立権が与えられました。これによって、身寄りがないなどの理由で、申し立てをする人がいない方、あるいは身内が疎遠で手続きを拒否している場合などは、法に基づいて市長が申し立てをすることができるようになりました。
法定後見制度は、現在、既に判断能力がない(または衰えた)人を、どのように援助するかという制度でしたが、これに対し、任意後見制度は、現在は元気だけれど将来、判断能力が低下したときのことが心配なので、今のうちに自分のライフプラン(生活設計)を決めておいて、その実行のために、あらかじめ後見人を決めておこうというものです。
簡単に整理すると、以下のような制度ということになります。
| 誰が | 本人が |
|---|---|
| いつ | 判断能力があるうちに |
| 何のために | 将来、判断能力が不十分になった場合に備えて |
| 誰に | 後見人になってもらいたい人(任意後見受任者)に |
| 何を | 生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部または一部について委託する契約を |
| どのように | 公正証書で作り、 |
| どうなったら | 判断能力が不十分になったら、 |
| 誰に | 家庭裁判所に |
| 何を | 任意後見監督人を選任してもらい、 |
| その監督の下で、依頼した後見事務をしてもらう制度。 |
任意後見契約には大きく分けて、次の3つのタイプがあります。
最も基本的なパターンで、判断能力が無くなってから、契約の効力が発生するものです。
判断能力が衰える前から、例えば月1〜2回程度、見守りのための訪問や日常の生活相談などを依頼する任意の委任契約を、任意後見契約と同時に結んでおくものです。
任意後見の場合、精神上の障害に限られますが、任意契約の場合は、身体上の障害の場合にも使えるという長所があります。
判断能力は不十分でも契約能力がある方の場合、契約締結と同時に後見監督人選任の申し立てを行って、直ちに任意後見人による保護を受けるというものです。
このタイプの場合、補助、あるいは保佐類型などの法定後見を適用したほうが良い場合もあります。
将来、家族や親族の世話になりたくない、あるいは期待できないという場合、あるいは夫婦のどちらかが先に亡くなった場合、遺された配偶者が痴呆になってしまった場合に備えるための利用があります。
契約移行型で、親の見守り支援、生活顧問契約などの利用があります。
知的障害のお子さんを持つ親御さんが、自分たちが高齢になって判断力が不十分になった場合に、残されるお子さんのために利用するケース。
| 本人の状態 | 今は元気でも将来の痴呆が心配 |
|---|---|
| 契約の意思 | 本人が公証人役場で任意後見契約を結ぶ |
| 利用方法 | 東京法務局で成年後見登記家庭裁判所に申立 家庭裁判所が任意後見監督人選任 |
| 後見人 | 任意後見人 |
| 本人の状態 | 契約の意思 | 利用方法 | 後見人 |
|---|---|---|---|
| 少しボケたかな | 必ず本人の同意が必要 | 家庭裁判所及び登記
|
補助人 |
| 判断能力が著しく不十分 | 本人も契約を望んでいる? (はい・いいえ) |
保佐人 | |
| ほとんど自分では判断できない | 後見人 | ||
| どんな場合 | 将来、本人自身の判断能力が衰えた場合に備えて。最後まで自分らしい人生を送るために |
|---|---|
| 契約の時期 | あらかじめ、任意後見契約により後見人を選任 |
| 契約内容 | 自己の生活や療養介護、財産管理までの全部または一部の代理権を付与する委任契約 (現金.預貯金の出し入れ、有価証券の保管.管理、公共料金の支払代行、老人施設入所手続き、介護保険の手続き、不動産の購入.管理.売却、亡くなった後の財産の処理など) |
| 契約形式 | 必ず公正証書による契約 |
| 契約開始 | 家庭裁判所より任意後見人監督人が選任され、代理権の効力が発生 |
| 登記の有無 | 公正証書を作成すると、公証人の嘱託で成年後見登記がされる |
| 後見人になれる人 | 本人の家族親戚、知人、弁護士や法律実務家、福祉の専門家、信託銀行、後見サポートセンターなど個人や法人 |